REPORT - BUDOKANN

ライブレポート:2017.9.2 日本武道館 [HEAVY POSITIVE ROCK]

UPDATE2017.10.16 BUDOKANN

2017年9月2日。SuGが日本武道館のライブ終了後、無期限の活動休止に入って以降、彼らについていろいろ考えていたら、1ヵ月以上が経過してしまった。

 

一番最初に、このFCサイトを通してファンのみんなに「日本武道館という夢を叶えよう」という言葉を伝えたのは、2015年3月9日、SuGの日に行なった『BLACK』のレコ発ライブの原稿だった。当時、喉の手術を受けて療養中だった武瑠は、その舞台でSuG復活後から過密スケジュールの中で度重なる体調不良や発熱に悩まされ、何度も何度もステージに立つこと、音楽を続けることさえ諦めそうになったことを告白。そんな自分を奮起させるために『BLACK』の歌詞を書き、デザインをし、小説を書いて、映画まで作ったことをファンに伝えた。

その直後「俺はSuG復活のとき、日本武道館でライブをやりたいと思いました。けど、いまのSuGでは無理でした」と武道館の話題を切り出した。「みんなと同じで、俺はこんなにも弱くて、すぐ立ち止まるしすぐ壁にぶち当たる。こんな完璧じゃない人間が夢を叶えられたら、もっともっとみんなに勇気を与えられるんじゃないかなと思うから。そのためには……みんなの力が必要です。一緒に武道館やりましょう」と最後は涙ながらに武道館への思いを訴えた。あれから2年————。

 

夢は、みんなの協力もあって、現実に叶えることができた。これは、本当に素晴らしいことで、SuGを応援してきたみんなが誇れることでもある。だが、それと引き換えに、バンドは無期限の活動休止という代償を支払うことになってしまった。夢という目標を持ち、それを実現すること。それは、なにかを犠牲にすることでもあるのかもしれない。「もしかしたら、こんな無謀な挑戦にバンドが耐えられなくなってしまって、自分たちの方が先にクラッシュしてしまう可能性もありえる」。武道館を決めたときから、メンバー自身、間違いなくそんなことも頭の中に浮かんでいたはず。それも含めて、彼らは武道館に挑戦することを“無謀”といっていたのだと、いまなら分かる。だから、武道館をやるという選択は、SuGにとってバンドの存続がかかるぐらいの一か八かの大勝負だったのだ。

当時、取材中に武瑠が「ウチの事務所は俺たちだけなんで、武道館失敗したら俺たちの未来はないです」といっていた言葉が、やっとリアルに響いてきた。SuGというバンドは不思議な存在で、どんなに深刻な状況に陥ってたとしてもそれがメンバー5人の楽しそうな雰囲気や、あのポップな音楽に覆われると、深刻な部分が薄まる部分があった。だから、ファンのなかでも、そこまで彼らがみんなと夢を叶えるためにとんでもない決断を下していただなんて気付いていなかったという人もいるんじゃないだろうか。そんなギリギリの決断を背負いながらも、SuGはずっとライブでも、取材でも明るく、メンバーは相変わらず仲良しだった。

そして、武道館という夢を叶えるためにただひたすら前だけを見て、足掻き通した5人。いままで以上に心身ともに限界までボロボロになりながらも、それでも無理やり前向き、つまり“Heavy Postive Rock”というSuGが掲げたバンドとしての姿勢を崩すことなく、彼らは武道館という掲げた目標に向かって走り続けたその結果、ゴールに到達する直前………7月31日、オフィシャルホームページを通して、バンドの無期限活動休止を発表した。ベスト盤を発売したとき、前回ベスト盤を出したその後、活動休止の発表があったので「今回もこの後活動休止とか、ないよね?」と冗談でいったら、「なにもかも武道館が終わってからじゃないと分からないよ」といっていた武瑠。だが、残酷なことに、武道館前に彼らはその結論を自ら見つけてしまったのだ。SuGはもちろん続けたい。でも、上手に生きて、平坦な刺激もなにもない中でSuGをダラダラと続ける日々は、彼らにとって恐怖でしかない。「もっと自分たちもドキドキしたいしファンもドキドキさせたい」。間違いだらけでも、心がズタボロに傷つこうが、それでも恐れずに両論覚悟で心揺さぶられるワクワクする場所、音楽を求めて常にたやすく手に入らない方、困難な道へと向かって無謀な挑戦をして足掻いてきたのがSuGというバンド。その歴史のなかで、SuG史上もっともドキドキして、心揺さぶられると思って選んだ武道館挑戦は、彼らに最高に泣ける結論を叩きつけたというワケだ。

 

自分自身への情けなさ、バンドが止まってしまう悔しさ、これまで支えてきてくれたファンへの不甲斐なさなど、特殊な想いがうずまくなかで迎えた9月2日、日本武道館。SuGがみんなと一緒に夢を叶えた舞台は、間違いなくSuG史上、最も「美しい」ライブ空間だった。活動10年目、<HEAVE POSITIVE ROCK>をタイトルに掲げたSuGが、アンコール&メドレーを含めて全26曲。武道館に約7000人のファンを集めて開催したライブは、どこまでもSuGらしいドキドキの連続で構成されていた。

オープニングのブロックは武瑠、masato、yuji、Chiyu、shinpeiが作るバンドサウンドで勝負を挑んだ。ライブ冒頭を飾ったのは“ぼくらは綱渡りだった 傷だらけだった”と、ここ武道館に至るまでの道のりを綴った「AGAKU」。晴れやかな夢の舞台。それでも歌詞が心を締め付けていく。MVを映していたLEDパネルが“容易く手に入らない そうだからこそ飽き果てない”の箇所だけリリックに切り替わった「HELLYEAH」、メンバーを映す画面が赤い安全ピンで縁取られた「不完全Beautyfool Days」————と、様々な演出を通して、次々と大事なメッセージを発信してくるSuG。何もかも見逃せない。

この後、「Toy Soldier」からはラップをフィーチャーしたダンサブルなパーティーチューンを連発。この曲は本来こうやってみんなを視覚的にも楽しませたかったんだとでもいうように、ここでは総勢100人のダンサーが入れ替わり立ち替わり、曲ごとに衣装まで変えて登場。ダンサーのパフォーマンスが楽曲に見事にハマっていて、他のビジュアル系は真似できないストリートカルチャーを感じさせるエンタテインメント性の高いパフォーマンスを見せつける。

そして「武道館、美しい景色です」とつぶやいた武瑠が「この場所で、心を込めて、削って、心を引っ掻いて書いた曲を歌えるのは幸せだなと思います」と話し、「桜雨」、「無条件幸福論」と切ないバラードを歌い上げると場内は静けさに包まれる。

武瑠がギターを弾きながら「Howling Magic」を歌い出すと、その空気をガラッと変わり、オーディエンスは再びヒートアップ。楽器隊とダンサーがコラボしていくというSuGらしいセンスが光ったセッションコーナーでは、久々にChiyuがサックスをプレイ。そのグルーヴを引き継ぎながら冒頭の「AGAKU」のルーツとなるヒップホップでファンクなオシャレSuGを築き上げてきた「sweeToxic」、「契約彼女、生贄彼氏」、「FRIDAY!!」を次々と演奏。この場面ではこの上なく彼らが堂々としているように見えて、なりたい理想の姿、バンド像なんてなにもなかった自分たちでも、10年続けることでいつしか“自分らしさ”を見つけることができたーーそんなメッセージを伝えているように思えた。

「gr8 story」から突入した後半戦はライブでも定番のシングル曲でアゲていき、さらに10周年ならではのスペシャルとしてメドレーコーナーを作り、ここではインディーズ時代の楽曲やライブでおなじみのナンバー7曲をコンパクトに繋いで披露。これは、武道館という夢の舞台を一緒に叶えてくれたファンに最高のプレゼントとなった。

そうして本編ラストの「39GalaxyZ」へ。星型の紙吹雪が降りしきるなか、みんなの合唱に続いて、武瑠が“臆病で弱いこんなぼくを変えてくれたのは『SuG』でした”“『SuG』を心から『愛してる。』”と歌詞を変えて歌うと、ワケもなく涙が溢れた。

「dot.0」から始まったアンコールでは、メンバー各々が自分の言葉で思いを伝えた。このとき、武道館の時間が止まった。「幸せしかない」といって、こんな素晴らしい景色を作ってくれたみんなに感謝を伝えて頭を下げたshinpei。いろいろ考えた結果「この先もSuGのChiyuとしてベースを弾き続け,SuGという名前を守る」と宣言したChiyu 。いいたいことが3つあるといって1つ目はみんなへの感謝、2つ目はやり残したことはないと話した後、3つ目として「SuGでできたつながりを大事にしてほしい」と述べたyuji。SuGが一番キレイでいられるところとして選んだ武道館で、SuGが止まってしまうことが「腹立たしいレベルで悔しい。一生悔やみたいと思います」と語ったmasato。武道館という大きな賭けに出て、その賭けに負けてSuGを守れなかったことを泣きながら伝えた武瑠は、その涙の意味を「弱いからじゃなく、大事だから泣くんだと思います」と説明。メンバーの思いが次々に胸に迫ってきて、こっちも涙が溢れる。

続けて、武瑠は13年前に武道館でHYDEのライブを初めて観たとき「これがやりたいとかじゃなく、やりたいことや夢を探して見ろと。その第一歩を13年前、この場所で踏み出せました」と振り返った。そのとき、曖昧な一歩を踏み出したことで自分はいろんな人と出会い、目標ができ、大切な仲間やファンが増え、夢が生まれ、その夢を「今日叶えられました」といい「これは映画とかマンガとかの主人公じゃなくて、無気力病でなにも持ってなかったひとりの少年が一歩踏み出して、夢を叶えたお話です。だから、ここにいる人たちも絶対にできると思います」という言葉を強い気持ちを込めて、すべての人に贈った。

このMCからの「teenAge dream」、「CRY OUT」、「Smells Like Virgin Spirit」はあまりにもリアルすぎて、震えるほどの感動が武道館を包んだ。

そのあとは、ダブルアンコールとして「LOVE SCREAM PARTY」、「ときどきすてきなこのせかい」を演奏し、観客を笑顔にしてライブを締めくくったSuG。メンバーと抱き合ったあと、武瑠は「ひとりの男の子の生きる糧になってくれてありがとうございました。みんなも絶対にできます。俺なんか、私なんかと思わず、一歩踏み出して下さい。それがSuG武瑠、そしてSuGの無理やり前向きなメッセージです。10年間ありがとうございました」と最後のメッセージを伝え、SuG初の武道館公演は終幕を迎えた。2年前、誓った夢は、本当にみんなで叶えることができた。それを勇気に、これからは一人づつが一歩を踏み出せ。そんなことを感じさせた幕引きだった。

 

SuGのメンバー5人は、これからそれぞれの人生を歩んでいく。“無期限”は終わりじゃない。音楽は人と人をつなげてくれる存在。みんなそれぞれが一歩を踏み出し、そこでまだSuGの音楽がそれぞれのなかで鳴っていたら、いつかはまた、つながるはずだからーー。

 

SuGが自身の身をもってみんなに伝えたかったこと。それは、やりたいことが分からなくても、叶えたい夢がなかったとしても、一歩を踏み出すことでなにかが変わるということだった。